福岡県ジェンダー平等フォーラム 2025 企画

『果たして九州男児は存在するのか?』から24年
『さす九』について考える

パネルディスカッション開催報告
イベントチラシ
開催日 2025年10月11日
会場 北九州市立男女共同参画センター・ムーブ
主催 NPO法人 男女・子育て環境改善研究所
協力 NPO法人 マミーズサミット・全国ネット
後援 北九州市

2001年に男性の家事や育児への参画について、「マミーズサミット・全国ネット」(なんと今年結成30周年‼)が「果たして九州男児は存在するのか?」調査を行い、北九州博覧祭においてシンポジウムを開催しました。

そこから24年、今では専業主婦は「絶滅危惧種」といわれる時代にもかかわらず、昨年から「さす九(さすが九州、男尊女卑)」という言葉がネットで話題になっています。

そこで、マミーズサミット・全国ネットのメンバーと男女共同参画推進に長年取り組んでいる方をお招きし、24年前に実施された「九州男児」調査を振り返り、令和の最新データとともに、果たして「さす九」は九州だけなのか、いやそもそも実在しているのかなど、家族・地域・社会のジェンダー意識の変化を探り、未来への提言を行う場となりました。

モデレーター紹介の様子 本日の登壇者紹介の様子
登壇者
登壇者紹介の様子

セッション1:24年前「九州男児」調査について

初めに北九州市で実施した2001年調査を紹介しました。
「九州男児=亭主関白度」を指標化。家事・育児20項目を点数化し、共働き率や結婚形態などの影響を分析しました。結果は「九州男児は存在する」が、東北や北陸も高得点。共働き率が低い地域ほど亭主関白度が高い傾向がありました。

モデレーターの神﨑さん スライド発表の様子

■濱砂さん

当時の調査は全国規模で実施。夫婦別姓や妻の就労への賛否なども質問し、『夫の姓を名乗るのは当然』『妻は夫を立てるべき』という回答が目立ちました。九州は「条件付き賛成」が多いなど特徴的な結果でした。時代背景として「専業主婦モデル」がまだ強く、家事・育児は女性の役割という意識が根強かったことを実感しました。

■田中さん

私たちも夫婦のセミナーをやっている時に、ママたちがこそっと「パパが育休とってくれているんだけど早く職場復帰してほしいんですよね」みたいに話すのを聞くことがあります。まだまだメインで支えるという点で平等にならないで補佐という概念、先ほどの手伝うというところですね。そこが変わらない理由なのではないかと思います。

■中橋さん

私はおもちゃ美術館という施設を民設民営で3年前に立ち上げましたが、先日も平日にパパだけが子どもを連れて遊びに来ていたんですね。「パパ頑張っているね、子育て」って声をかけたんですよ。クールな顔をして「僕を褒めないでください、妻の方がめっちゃ頑張ってますから。僕なんか褒められた口じゃないですよ」って言われてそんな時代になったんだな、そういうところは変わってきた点なのかなと思いました。

理由っていうのが何なのかを見たときに、家計のためだけにということでもないとは思いますけれども、共働きが当たり前になったというところ。あと制度が少しずつ整ってきた。次には制度から風土を整えるというステージに移らないといけないなというふうに思いますが制度はもろもろ子育て支援をはじめ整いつつあるかなというようなことでこういったことも変わってきた点なのかなと思っているところです。

■伊藤さん

広場の運営をしていて、毎日だいたい50組とか100組ぐらいの利用者を毎日見ているんですが、本当にお父さんの利用が多くなっています。「のびすく仙台」は21年前にオープンしますが、その当時はお父さんは利用してるんですけども「妻に言われて仕方なく来た、妻が連れてきた」というお父さんが100%だったんです。

でも今は、お父さんだけが子どもを連れてくるという家庭が多いです。土日によっては「あれ今日お母さんの姿がない」っていう時間帯もあるくらいお父さんの利用率がすごく増えていて本当にそこだけ見ると確実に変わったなっていうふうには思います。

セッション2:令和の調査を受けて見えてくること

セッション2の様子

■濱砂さん

今回の開催にあたって、もう一度調査をしました。

2025年最新調査(回答508件)では、家事・育児の分担に変化がありました。
料理 83.7%、食器洗い 59.1%が女性担当。ゴミ出しのみ男性 42.1%と健闘。「平等に分担」が増えたものの、依然として妻の負担が大きい現実が浮かびます。
育児では「外遊び」で男性 30%と健闘する一方、「予防接種付き添い」「病気時の看病」は女性が 80%超。「寝かしつけ」女性多数。

夫婦別姓賛成は女性が優勢。男性育休取得率は 8.1%と全国平均(約 14%)を下回り、課題が残ります。「変化はあるが、まだ道半ば」という印象です。
今言われるようになった「名もなき家事」を24年前のアンケートはあぶり出しています。

発言する中橋さん 伊藤さんと田中さん

■中橋さん

最近、夫婦対象のワークショップをしていて、まず夫婦2人でどのくらい家事育児を担っていると思うかを、自分で7対3とか6対4とか書いて、まず夫婦で言うんです。そして夫婦で話し合ってうちはこのくらいかなというのをそれぞれに発表してもらう。

その後、例えば子どものPTAどうしてるとかの細かい名もなき家事のチェックをしてもらうと、どの会場も妻側からは「私の方がたくさんやっていると思っていたけど意外とこの人頑張ってた」。夫が「僕あんまりできてないな、妻任せだなと思ってたけど意外とやってていっぱい丸がつきました」っていう回答が多かったんです。

でも過渡期だなと思うのは、「夫にやってもらってました」「妻がやってくれてます」という言い方をするんですね。
よくやってる夫でも表面的には当たり前にやってるんだけど、でも言葉としてやってあげてるっていう言葉が出るっていうことは、そうは言いながらも本当は妻の仕事っていうどこかに根っこがあったり、妻側もうちの夫よくやってくれてます、やってくれてたっていう表現になっていることは、まだまだちょっと完全に男性女性が非常に対等になってきたかというと、まだ根っこの意識は残ったままなんだけれども行動はだいぶ変容してきているのかなと思います。

■伊藤さん

子育て広場では父親利用が増加しましたが、まだまだ来ないっていうお父さんの方が圧倒的に多いし、企業に出向いていてお父さん向けのプログラムをすると、参加するのは本当にやってらっしゃる方、意識の高い人。二極化が進行しているんですね。積極的な父と、全く関わらない父の差が大きい。

さらに、20数年前は、それこそ男は外で仕事、女は家の仕事という図式があったのですが、今は男は仕事は変わらないんですが、女は家で仕事、プラス外で仕事という、仕事が増えてるだけ。そのために女性の負担はどんどん増えて時間の貧困に陥り、メンタル不調になられてしまって大変という家族が本当に最近増えているなと思っています。

■田中さん

「察してほしい」女性 37.7%という結果に注目します。パパも「すごく頑張りたい。ママをサポートしたい。でも頑張り方が分からない」っていう人も多いんです。
家事に関しても育児にしても到達点がママとパパとで違っていて、良かれと思ってやると怒られてしまう。

子ども生まれてから夫婦で話をする時間もそもそもなく、コミュニケーションがなかなか取れていなくて、擦り合わせができていないのかな、などと聞くことも多いです。
その夫婦のコミュニケーション不足が家事・育児分担の頑張りどころを間違えて、産後クライシスが激しくなるというのも感じています。

パパからは「頑張りたいが正解が分からない」「察するって謎かけみたいで怖い」という声も聞くので、夫婦の話し合い、それも産前からの話し合いが重要と思います。

■神﨑さん

ありがとうございます。
私言おうと思っていたのが、まさにそのことなんですね。「自分が言いたいことを察してほしい」というのが女の人に多いとありましたが、言わないとわからないと思うんですよ。
夫婦っていうのは家族経営みたいなことやってるのだから、やっぱり言い合わないとどういう方向に行くか分からないですよ。

セッション3:未来への提言

登壇者の皆様

■田中さん

両親学級に「夫婦の関係づくり」を組み込んでいくと、長い家族の時間・子育ての時間というのが楽しくできるのではないかと考えています。
また、キャリア支援と子育て支援を連動させ、キャリアコンサルタントが専門職として、人生の見通しを一緒に立てる・考えるということも必要だと思います。

■伊藤さん

子育て支援をやってきて、人って育てられたようにしか育たないなっていうのを痛感しています。だからこそ子育て支援の現場はすごく大事で、支援者がジェンダーや男女共同参画の視点を持ち、言葉遣いから変えていくことが大切だと思います。

■中橋さん

大学生が家庭と職場の両方を体験する「両立インターンシップ」を実施していますが、家庭というロールモデルが自分の両親しかいないという大学生の価値観が、劇的に変わるんです。教育現場での体験機会を作ることで、まだまだ良く変わってくると信じたいです。

■濱砂さん

「そうめん論争」に象徴される“妻前提”の発想を転換し、アンコンシャスバイアスを可視化し、学生のうちから本当に体験して感じ取れるようなものをずっとやっていかなきゃいけないと思います。今年、福岡の女子大学生とアンコンシャスバイアス調査を行い、11月21日にその結果を大学生が発表することになっています。

また、マミーズサミット・全国ネットはネットワークの力で知恵を共有してきたことが、失敗せずに30年続けてこれた鍵ではないかと思います。

■神﨑さん(まとめ)

アンコンシャスバイアスが風土とか世の中を作っていく、というのを考えないといけないのかなと皆さんの話を聞いて思いました。

また、ジェンダードイノベーションの視点で暮らしを再設計し、「さす九」ではなく「さす女」「さすマミサミ」へ。次の30年に向け、実践と研究を結び、誰もが生きやすい社会を目指していきたいと思います。